今年12月から1月末までの二ヶ月間、株式会社Squareとテックスープ・ジャパンが共同してNPO向けプログラムをスタートしています。
Squareはスマートフォンやタブレット端末を利用して簡単にクレジットカード決済を受け付けられるレジアプリを提供しています。今回、テップスープ・ジャパンに登録する団体から5団体を選出し、プログラム期間中カード決済手数料無料で提供、財政・支援基盤をパワーアップしてもらうことを目的としたプログラムです。
●http://www.square-blog.jp/square-for-nonprofits-2015
そのプログラム助成5団体中に「NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」が選出され、本団体への導入を「マチバリー」としても支援させていただいております。
今回は「Square for Nonprofits」プログラムの実施に関わる方に、どんな思いから本プログラムを立ち上げたのか、また助成団体として「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」が資金調達にどのような課題を抱えどのような意図でこの機会を生かそうとしているのか、お話を伺いました。
●時松志乃さん 株式会社Square広報
●坂口和隆さん 特定非営利活動法人日本NPOセンター事務局次長
●栗林知絵子さん NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク理事長
●天野敬子さん NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク事務局長
●水島政行さん NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワークWEB担当
── まず時松さんにお伺いします。そもそも、何故今回「Square」さんとしてNPOの支援プログラムに乗り出されたのでしょうか?
時松:もともと「Square」はアメリカで創業された企業なのですが、向こうは日本に輪を掛けたクレジットカード社会なんですね。創業者のお友達がアート作品を作っている人で、その作品を青空市で売ろうとしても結構な値段がついていたので、お客がその場で現金払いをすることは難しい。お客がカード払いを希望しても、このような個人のお店に導入することは手数料が高額なこともあり難しかった。結果として、お友達は作品を売ることが出来ず、機会損失になってしまいました。
こんな風に、大きな資本力を持つ店だけがどんどんクレジットカード決済を導入できて儲け、そうではない小さな資本が儲けることができないのはおかしいのではないか。そう創業者が考えたことが出発点で、ちょうどスマートフォン(iPhone)が普及する時期も重なり、これを使って簡単にクレジットカード決済が出来るサービスとして生まれたのが「Square」でした。
日本でサービスが提供されて2年半ほどたちますが、おかげさまで事業者は順調に増えています。今回のプログラムはテックスープ・ジャパンさんとお話する中で、事業者だけでなく、NPOの活動にも本サービスは生かせるのではないか、という気付きがあったことがきっかけです。じゃあ、実際にどのように運用できるのか弊社としても見てみたい、と思い、今回一緒に取り組むことになりました。
── 坂口さんにお伺いします。「テックスープ」・「日本NPOセンター」としては、どのような思いから本プログラムをスタートさせたのでしょうか?
坂口:「テックスープ」は非営利団体を対象にソフトウェアの寄贈をおこなっているサービスで、現在全世界で約120の国と地域で実施されています。日本ではそのパートナーを私達「日本NPOセンター」が務めています。
テックスープでは「ITの力をNPOの力に」をミッションに日々さまざまなNPOを支援させていただいているのですが、やはりNPOにとって財政の問題は非常に大きいということが実感です。助成金や委託事業頼みでは安定した、自由闊達な活動を長期に渡って支えることは難しい。やはり会費や寄附・物販などで自己財源をある程度確保していく必要性を常々訴えています。
今回「Square」さんからお話をいただき、その自主財源獲得の一助として、寄附を募れる・物販にも使える本サービスは非常に有効なツールとなりうるのではないかと考えました。
── 本プログラムの助成対象5団体を選出するにあたり、どのような基準で選ばれたのでしょうか?
坂口:「Square」さんとミーティングを重ねる中で、既にクレジット決済を導入済みで順調に寄附を集めているような大きな団体より、今は規模的にさほど大きはなくツールも未整備なのですが、今の社会状況のニーズにあったテーマで活動されている団体、という視点をもとに選ばせていただきました。
時松:それに加えて、地域に根ざした活動・コミュニティを形成し地域社会に貢献する活動をされているNPO、という観点も要望させていただきました。
坂口:結果、今回5団体にお声掛けさせていただいたのですが、特に「NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」さんは、今何かと注目されている「子どもの貧困」をテーマに活動されている団体であることに加え、日本NPOセンターとしても一度取材させていただき会報にも掲載させていただいたご縁もあって、今回選ばせていただいた次第です。
── 「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」の皆さまにお伺いします。今回そのように本プログラムに選出されたわけですが、現在団体としてどういった資金的な課題を抱えていらっしゃいますか? またその課題に対して本プログラムをどのように活用していきたいとお考えですか?
栗林:「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」としてはもちろん活動の幅を広げるための安定した資金確保は課題です。そのために使えるツールは使っていきたいと考えています。
天野:今まで私達は寄附をいただくのも、基本的にその寄附していただける方との一対一の直接のやり取りを通じて成立させることが多く、いわゆるファドレイジング的なことはおこなってきませんでした。そのため、民間の助成金で賄うことが難しい「人件費」が工面できず、事務局でマネジメントを担当する専任スタッフを雇用することが難しい状況でした。現場の活動については助成金で賄うことは比較的容易なので、今後は独自財源を増やし、スタッフを雇用する財源を確保することが団体としての課題です。
水島:実際に「Square」のツールを触らせていただきましたが、これを団体の実際の現場で使っていくためには、ツール自体の改良やNPO側の運用スタッフの訓練など、ピックアップすべき課題が多々あると考えています。ただ、今回は今後の期待を含めてやったことがない実験的な試みとして、価値があると考えます。
天野:そうですね。今回のSquareとTechSoupの共同プログラムはひとつの試みとして面白いですし、今後「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」が本格的なファンドレイジングをおこなっていく最初の一歩になっていければと思っています。
栗林:「こどもが歩いていける範囲に居場所をひとつずつ」という目標で日々活動を続けていますが、そのためにやるべきことは多いです。その目標は私達だけでは実現出来ず、いろいろな方の協力が不可欠で、何よりお金が必要です。その「さまざまな人の関わり」という点において、今回このようにお声掛けしていただいたことはありがたかったです。
そして、12月はちょうど寄附月間です。「子どもの貧困」に取り組む私たちの活動へ協力していただく方法として「寄附」という行為はとてもありがたいです。今回のプログラムを通じてだけではなく、直接のご寄附ももちろんお待ちしておりますので、どうかよろしくお願いいたします!
── 新しい試みを通じて、活動も人の輪も広がっていければよいですね! 皆様、ありがとうございました!