「セーフティーネットを家族に背負わせる社会を変えたい」:社会的養護から巣立った子ども達を支える「アフターケア相談所ゆずりは」の挑戦

マチバリーは「アフターケア相談所ゆずりは」のクラウドファンディングを支援しています!

2015.10.30

社会全体の地盤が低下すると、真っ先に影響をうけるのは弱い立場の存在、特に子ども達です。
現在、児童虐待の件数は年間55,000件を越えています。そして約43,000人の子ども達が、家庭で生活できず児童養護施設や自立援助ホームなど「社会的養護」の状態で生活しているという現実があります。

しかし、児童養護施設は18歳まで(高校に進学しなかった・できなかった場合は18歳までいられないことも)、自立援助ホームは20歳までしかいることができず、多くの子どもがまだ不安定な状態のまま自立を迫られ、支えもなく社会に放り出されているのです。

彼らの多くは安定した住まいをみつけることが難しく、またちょっと困った時に頼れる家族がないことで、ひと息入れることすら叶わず社会の荒波にもまれつづけています。古巣の施設に頼ろうにも、施設の人手不足や、そもそも職員で彼を知っている人が誰もいないなどで、頼ることも出来ません。

そんな「社会的養護」出身者のケアが間に合っていない現実に着目し、そのアフターケアを担っているのが「アフターケア相談所 ゆずりは」です。
「社会的養護」だったこどもたちが抱える困難とは? そしてわたし達にも出来ることとは?

今回は現在改装工事中の「ゆずりは」におじゃまし、支援スタッフの広瀬朋美さんにお話を伺いました。

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支援スタッフの広瀬朋美さん

一瞬でも休むことを許されない子ども達

── 「アフターケア相談所ゆずりは」ですが、改めてどのような活動をされているのでしょうか?

広瀬:「社会的養護」といって主には児童養護施設や養育家庭・自立援助ホームといったところから一度自立した方々が、ひとりでは解決出来ない問題が起こった時に、一緒に相談して既存のサービスなどに繋げるアフターケアのお手伝いをしています。

そもそも児童福祉法第41条に、児童養護施設から出た児童のアフターケアについてはその施設が担うことと明記されています。

●児童福祉法(昭和22年法律第164号)
第41条 児童養護施設は、保護者のいない児童(乳児を除く。ただし、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には、乳児を含む。以下この条において同じ。)虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設とする。

ただ現実には、人員的にも金銭的にも、職員は現在施設内にいる子どもの対応だけで精いっぱいになりがちです。だから、施設を退所した方が気軽に相談しづらい現状があります。

施設を出た方は、ただでさえさまざまな困難を抱えていることが多いのです。たとえば虐待を受けたことによるトラウマ。その影響による人間関係の不調。そのために仕事がなかなか長続きしない。でも、働き続けなければたちまち生活が破綻する。そんなプレッシャーの中で、ちょっとでも頼ることが出来る家族や親族がいない彼らは、休むことも許されません。

そういった状況の中で「ゆずりは」は、当初は「自立援助ホームあすなろ莊」で9年間スタッフをしていた高橋亜美(現ゆずりは所長)が、「あすなろ莊」を出た子どもたちのアフターケアを担う独立した部門として始めました。

ですが、始めてみると関わったあすなろ莊を出た子どもたちから「俺の友達で、あそこの施設を出た奴が困っているんだけど何とかしてくれないか」というような他施設出身の子どもたちの相談事が口コミでどんどん持ち込まれるようになったんです。

そこで「これはもう、自分の施設だけをやっていてもしょうがない」と2011年に高橋が独立させ、現在の活動に至ります。

「最近は妊娠や中絶の相談が多くなったと感じています」

── 現在利用されている方はどのような方が多いのですか?

広瀬:相談件数でいうと、昨年度(2014年度)でいうと、一年間でのべ11,490件、実数でいえば301人でした。その中で具体的な施設退所者・当事者の方は88人にのぼります。

年齢別で見ると、下は16歳・17歳から、一番上は60代の方もいらっしゃいます。中でも一番ボリュームが大きいのは20代・30代の方でしょうか。

── 相談内容はどんなものがあるのでしょうか?

広瀬:さまざまですね。単純に失業してしまった、家賃滞納が続いて追い出されてしまった、いう相談はもちろん、やはり施設から出て行く時に住み込みの仕事を選択されている方が多いので、仕事と同時に住まいもなくしてしまった、という方の相談も多いです。

また、これは肌感覚でしかないのですが、最近は妊娠や中絶の相談が多くなったと感じています。望まない妊娠で中絶費用がない、相手も分からない、相手に逃げられたというような相談ですね。

── 具体的な支援メニューとして、「ゆずりは」はどんなことをされているのでしょうか?

広瀬:まずは生活支援ですね。当事者の方からの相談を受けたら対応し、生活保護申請など各種行政サービスの紹介や手続きの代行・同行。医療的なニーズがあれば病院への同行や立ち会い、術後の精神的なケアも行っています。

また、サロンとして週2回事務所を開放しています。水曜日11時~17時、金曜日は17時~20時までで、金曜については夕食も提供しています。

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おじゃました時はちょうどサロンの真っ最中でした

木曜日は高卒認定資格取得を目指す勉強会もおこなっています。再チャレンジをしたいと考えた時に、どうしても最低限の学歴は必要です。だからその部分はこちらでバックアップしていこうと、勉強会参加時の交通費と夕食、そして本番の時の試験代を負担しています。

これら費用のうち直接的な就学支援に関する費用は、私達が持っている「ゆずりは基金」という就学支援のためのささやかな基金から捻出しています。ここからは他に、運転免許証などの資格取得費用や、一度社会に出たあと「やっぱり学校に行きたい」という子どもの為の給付型奨学金も拠出しています。

そのほか、現在は年に一回「MY TREE ペアレンツ・プログラム」というものを実施しています。これは今現在虐待をしてしまっているが「虐待をやめたい」「自分を変えたい」と思っている親御さんを対象にサポートするプログラムです。今年は9月から12月の毎週火曜日に実施しています。

新しい「ゆずりは」~クラウドファンディングの開始

── 今まで小金井にあった「ゆずりは」ですが、今回国分寺へ移転し新たな展開のためクラウドファンディング「児童養護施設等退所者の方の働くことを支援する工房を開設したい」を開始したのは何故なのでしょうか?

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移転した「ゆずりは」外観

広瀬:きっかけは取り壊しです。以前入っていたところは古い物件だったのですが、大家さんの意向で全部取り壊してアパートにするとのことで、移転を迫られました。ただ、これはいいきっかけになるのではないかとわたし達は考えました。

目下のところ「ゆずりは」にさまざまな形で繋がる人は増え続けています。そしてそれは氷山の一角です。基本的に事務所まで来られない方からの相談が多いので、連絡をくれた方にこちらからアウトリーチしお話をうかがいにいっていますが、ここまで来られたり連絡したり出来る方はまだ力があり、何とかしようと思っている方だからです。実際は「どうせ行ったって無駄」「どうでもいい」と諦めてしまっている方がたくさんいます。

移転するにあたり、そんな方たちが来やすくて、かつたくさん来ても受け入れることが出来るような物理的な広さを確保するチャンスではないかと考えたんです。

工房を作ることも、ずっと切望されていたことでした。今この場所には「働きたい」のだけどさまざまな事情で「働けない」、だけど「働きたい」と思っている方がたくさん繋がっています。そういう人がちょっとずつなら働ける、就労に向けての第一歩となれるような場所を作りたいとずっと思い、今回その実現に向け応援をお願いするクラウドファンディング「児童養護施設等退所者の方の働くことを支援する工房を開設したい」を開始しました。

移転と改装は先行して開始していますが、ここは素敵な場所にしていきたいです。「働いていない・働けない人間が使うのだから、最低限の空間でいいじゃないか」という考え方ではなく、照明や設備にちゃんと配慮があって心地よい、通っていることを誇らしく思えるような場所にしていきたいと考えています。

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内部はまだまだ工事中です。

── 新展開を始めようとする「ゆずりは」ですが、今後どのように支援を広げていきたいですか? また課題などありましたらお聞かせ下さい。

広瀬:なにより、今現在切実な問題を抱えて相談にこられる方への支援が第一義です。そこは変わりません。ただ、それだけでは根本的な問題の解決にはならないので、今後は予防的な支援を広げていきたいと考えています。

具体的にはお母さんに向けてのプログラムですね。支援センターやママ友クラブなどは各地にありますが、どうしてもそこに馴染めないお母さんはたくさんいます。そうした孤立したお母さんが、自分の子どもに当たってしまう確立が大きいのです。だからそのようなどこにも居場所を見出せないお母さんたちが、自分の抱えている不満や問題を正直に話しても非難されない、ほっとひと息つけるようなサロンを開きたいと計画中です。

また、やはり現場に足を起きつつの発信が急務だとも考えます。子ども達の現状を変えるには、逆説的に子ども達だけを見ていても変わらない。子どもを取り囲む社会の方を変えていくアクションを起こさなければならないのですね。

「働けないのは仕事がないからでしょ」といって、突然仕事だけあてがおうとする社会に対して「仕事だけ与えてもうまくいかないよ、ちゃんと段階を踏んだ支援が必要だよ」と実践しながら発信していく。何か事件があれば何も知らない外野から一方的に攻められがちのお母さんについて、お母さんを囲む環境を実際の関わりを通して発信していく。そのようにして社会の意識を変えていかなければと思っています。

ただ、支援をし、活動を広げていくにはやはり資金が必要です。今回クラウドファンディングで移転に伴う費用の応援を募っていますが、日々の現場において支援に当たれるスタッフも足りません。現在「ゆずりは」の活動資金の約3分の2は助成金頼みで経営が安定せず、この部分を盤石にすることが課題です。

わたし達が活動している中で常日頃思うのは「日本の最大のセーフティーネットは家族」だということなんです。ですから、それを失っている人にとっては、本当に世の中は生きづらい。本来は公的な仕組みとして用意するべきセーフティーネットを私的に押しつけている現状を、わたしたちは最終的に変えていきたいと考えているんです。

今回のクラウドファンディングが、まずはそれに向けての第一歩になっていければと思っています。[了]

マチバリー
ゆずりはの挑戦「児童養護施設等退所者の方の働くことを支援する工房を開設したい」をどうか応援下さい!(下記画像クリックからREADYFOR?のページへ)
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ABOUTこの記事をかいた人

大志郎

札幌出身・東京在住。「マチバリー」管理人。つくろい東京ファンド広報。認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 広報。広い意味で支援に関わる様々な方のお話をうかがって撮ったり書いたり。あなたのお話も聞かせて下さい。 個人ブログ→だいしろぐ Twitter→@dai46u